2月17日
手桶隊


参道に手桶隊が現れる

いよいよだ。


撒かれる水で男達は散る

勢いを付けて

水は水平に飛んでくる


男達も立ち向かう

その背からは湯気が立つ


水は容赦なく柵の外まで飛んでくる。

観衆は板囲いに身を隠す。

バタバタバタ....

板の向こうで跳ねる水音。


エッサ エッサ

手桶衆は水汲場を往復する。

ウオ−

男達の声

ワ−

観衆のどよめき。


手桶隊の水攻が一所に集中しだす。

ここから出るぞ。

誰かがささやく。


ウオ−

反対側の柵の近くに人が押し寄せる。

湯煙が上がる。

男が一人群れから離れて来る。

桟敷席の下に走る。

上に向かい

神(しん)はいるのか!


いない! いない!

男は叫びながら帰る

いないぞ! いないぞ!

みんな引け!引け!


群る男には届かない

エッサ、エッサのどよめきに

その声は消される。


まつきちさんが駆け寄つて来る。

フイルムケ−ス1個と

カメラを私に渡し、

「いきます」

の一言。

健さんは?

「わかんない」

そう言い残して

駆け去る。


参道に渦が二つできる。

今年は

手桶隊に

分がありそうだ。


2000.2.17
by Kon & まつきち