宿ポータル




 宿と旅行代理店

 漢字と「ひらがな」を使うように、「ホテル」と「旅館」がある。それは、昭和23年制定の 旅館業法に、両者区別して定義されているのだから、日本の当たり前の文化といえる。 総務省の産業(小分類)別全事業所数を見ると、平成13年(2001)の[旅館,その他の宿泊所]は 74,659事業所とある。平成8年(1996)は87,416だから、減少著しい。
 この中で、国際観光ホテル整備法により一定の基準を満たし政府登録の「ホテル」「旅館」は全国に約3000軒という。それ以外に日本全国に7万軒程、旅館、民宿、ペンション、ビシネス宿があるということだろう。

 JTBや日本旅行といった旅行代理店が送客システムとして対象にするのは、政府登録の「ホテル」「旅館」だろう。残りの宿泊施設の上のクラスは、顧客を維持するのにすこし無理しなければならない。例えばだが、通常10000円の宿に13000円の料金をつけ販売される。この場合の代理店収入は、3000円(企画料)+2000円(送客手数料20%程度)+1000円(保険料+取立手数料+送金手数料)の合計6000円という。宿も経営努力で、「二食付き10000円 朝食付9000円 素泊り8000円」のような料金体系とする。

 そもそも、家族経営となれば最初から旅行代理店のシステムには頼らないだろう。一度泊っていただいた客を大切にする。これが基本なのだろう。頼みは口コミ。

 しかし、いい時代が来た。インターネットはグローバルな口コミと考えたらどうだろう。個人の趣味やマイナーなテーマの掲示板も、見ず知らずの人が覗いて行く。書き込みをする人の倍に見られていると考えていい。ある調査で、掲示板利用の目的は情報収集が60%という結果が出ている。


 日本の宿

  日本の宿泊産業は、古くは奈良時代の「布施屋」,「宿坊」,「御師」など信仰と結びつき、街道が整備され庶民にゆとりができると、伊勢参りに発展し「旅籠」となった。商用としては、参勤交代の本陣、脇本陣だが、もてなしは助郷といったボランテイアで行なわれた。税の徴収といった形体に似ている。「ホスピタリティ・サービス」といった商業サービスではなかった。

 宿場には石高が決められていた。つまり本陣、脇本陣は公営宿泊所。幕末から明治の大変革で本陣、脇本陣はどうしたのだろう。大半は廃業なのだが、街道を行き交う庶民を相手の商売に切り替えた例が多い。そんな同業組合が、「講」の指定宿を取りつけ、伊勢詣の客で繁盛する。商業としての「旅館」は、この頃からの伝統だろう。

 これから考えると、宿と旅行代理店は「旅館」の生まれた時から必要なシステムだったことがわかる。 「旅館」と「講」は、「旅館」と「旅行代理店」と発展し、顧客は庶民から社用族に主役を変え今日に至った。

 長引く景気低迷で国内旅館の総売上は、平成3年の35,020億円から平成11年は34%減の23,240億円まで落ち込んでいる。公共投資削減の建設業も低迷の一途だが、裾野の広い観光や旅館の落ち込みも深刻である。今、日本は制度崩壊の局面にあると思える。

 クラブ トクー! 

 観光地は、平日はガラガラ。当然、宿泊施設もそうで、駐車場に全く車が見当たらないのが一般的な風景だ。この風景から、1998年に加盟宿42軒で「空室利用のあき宿倶楽部」をスタートさせた。現在の「トクー!」である。

 一般的に旅館の部屋の稼働率は50%で経営は成り立つ。そのような原価計算でビジネスを始める。宿には「空けておくなら安くても利用してもらいたい」という本音はあり、旅行者は「できれば安く利用したい」と思う。その両者のニーズをつなぎ合わせたのが「トクー!」のサービス。
 もう一歩踏み込んで、宿泊料金を泊食分離した。宿泊料金を「素泊り」「食事」「別料金」で表示することで、合理的な、宿泊料金体系とした。

 さらに、「トクー!」の運営費を会員からの会費とした。送客手数料・企画料・広告料・ホームページ作成料・クーポン手数料・取立手数料その他一般的な手数料は宿から一切徴収しないことにした。理由は明白で、旅行者が主導権を握るサービスを目指したからだ。

 閉ざされた会員制システムにしないため、料金体系に工夫がしてある。
プレミアム会員 年会費 3780円トクー会費 420円
パブリック会員 年会費 0円トクー会費 840円
 つまり、利用一回ごとに負担する利用料(トクー会費/人)と賛同基金的な年会費を設けて、個人の利用頻度に合わせて選択できる工夫がしてある。

 このシステムは、ネットワーク予約管理システムを導入していない。宿は電話とFAXだけでも参加できる。 予約はメールに返信として解答がくる。


 庶民の宿ポータル 

 現在、登録宿泊施設が2000軒程度。信越地区が737軒、四国が42軒、関東335軒と地区により参加宿に大きな差が有る。まだまだ発展段階といえる。

 「クラブ トクー!」は、最低限メールが必要なインターネットビジネス。個人の時代に向かって、どうしても生まれなければいけないサービスであった。ネットワーク技術から一歩引いた位置にいるが、旧来の商用システムがフォローできないサービスを生み出した。むしろ、革命的といえる。勝利のポイントは、明確な「ポリシー」。それにより、参加対象が多い非高級宿予約で成功した。

 このサービスは、非会員の一般の人にも840円/人の手数料で従来の旅行代理店手数料のない宿泊サービスを提供する。いうなれば、宿の亭主と泊り客のガチンコ勝負といえる。それを望む亭主と、それを望む客は多いと思うのだが。

 旅行会の幹事さん。電卓片手に「クラブ トクー!」とガチンコ勝負。春、秋2回の旅行会。5名で行くとして、年会費 3780円を払ったのがお得? それとも様子眺めでパブリックにしとく? 詳細は利用方法をじっくり研究してください。
 それより、もっと重要なのはお宿のサービスと料金。それは一回でわからない。ここで重要なのが口コミ掲示板となる。

 ホームページとメールと掲示板。今ではオーソドックスなインターネットツール。高度なデータベースシステムが無くても新しいシステムが生まれる。インターネットはIT革命。身近なところうで革命を楽しもう。


 2004年9月 

 2004年9月。「クラブ トクー!」のWeb改装のメールが届いた。少し気になるのはシテイホテルが前面に出ていること。一休.COMとは両極端のサービスのはずだ。気になったので小さな宿の掲示板を覗いて見た。以前と同じ雰囲気なので安心した。

 例えば、小さな里山のふもとに、昔民宿をしていた一軒屋があったとしよう。長い務めを終えた夫婦が郷里に戻ってきた。足りない年金の為に民宿でもと考えた。もう年だから、素泊まり宿とした。食材持ち込みOK。庭にバーベキューサイトをこしらえた。
 そんな民宿を、「クラブ トクー!」は掲載するだろうか。「楽天トラベル」は掲載するだろうか。もし掲載しないのなら、もう一つのビジネスチャンスなのだが。

 里山は人に優しい。小川のせせらぎの音や、木々を伝わる風の音を宿のホームページに載せた。雑草や昆虫の様子も発信してある。なによりもいいのは、そこで育った主人の思い出話。

 夏の終わりに、その宿の掲示板にこんな書き込がある。

 今家につきました。かぶと虫は元気です。あの魚の色はとても綺麗でした。 また来年も行きたいです。それまでお元気で。おばあちゃんによろしく。

 これはビジネスといえるだろうか。いえないかもしれない。だが、顧客のためにフロアーで気配りするホテルマンと、自分の故郷で真心のもてなしをする老夫婦の「ホスピタリテー」に違いはないような気がする。なによりも、休暇ごとに子供達の歓声が聞こえるようになった里山を、僕は大切なことだと思う。インターネット情報インフラは人に優しいものでなくてはいけない。

2004.9.5
by Kon

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