平成17年度 白山祭
愛知県北設楽郡東栄町古戸
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古戸(ふっと)は別所街道沿いの街である。
北に向かって多和金の峠を越えれば信州飯田に続く。
西に鴨山川筋に入れば、津具村に出られる。
戦前は軍馬の市が建ち,にぎわった。
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鴨山川筋の途中に権現山があり、頂上に白山神社が祭られている。
ここは、白山聖(ひじり)の修験場であったと言われる。 確かに、峰続きの岩場に人が一人雨露をしのげる洞窟があったりする。
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「祭には、村総出で頂上に荷物を上げた。下の水場で樽に水を詰め、しょって上がる。大変でね。ずるして八文目しか入れてなかったら、背中でチャブン、チャブン。よけいに大変だったよ」。 山仕事でひと月ほど留めてもらっている宿の主人の話しである。
今日、12月15日(土)は、その白山祭り。
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みさき様と山の神にお供えし、つづいて「高根祭り」が始まる。このお飾りと供物、そして祝詞にお払い、全て村人(祭り太夫)がやってしまうのには驚きだ。
拝殿のうらには祠があり聖様に般若経を読み上げる。
拝殿脇の住吉の祠の前で一舞し、境内隅のガラン様に挨拶をする。
そして、御神宝の開帳に移る。
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白山神社の御神体、錦に包まれたお珠を頂く。
太鼓・笛に合わせて「うたぐら」が唱えられ、神寄せ。「式さんば」
「お珠の舞い」
「権現の舞」、「げぐうの舞」、「順の舞」と進む。
「花の舞」
高根に招いた八百万の神を、「げぐうの舞」、「順の舞」でおもてなしをし、「花の舞」でお送りする。そんな式次第なのだろう。
山仕事は4時には切り上げる。今年の冬至は12月22日。日が沈むのが早い。山の端に太陽が落ちると、すっかり闇の世界となる。平地の人間には想像もつかない。
旧暦ならば霜月。この祭りも、衰えた太陽に元気になってもらう祈りの神事なのだろう。
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さて、「みさき様」とは、修験の先達、白山開祖=秦澄のことだろうか。それなら「ガラン様」とは?
苔むした石搭に、かすかに「十三」の文字が読取れるのみだ。その上に天狗マーク。おそらく、「ガラン様」=「伽藍様」、つまり、この白山社のガードマンということなのだろうか。
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古戸の道祖神
別所街道を西に別れ、普光寺を過ぎて鴨山川を渡る。今は鉄の橋だが、かっては「びたびた橋」だったとも。大雨で流されるのだが、綱がついていいるので回収できた。
この当たりを「日向」とよび、川向うの山麓を「日陰」とよぶ。実にリアルな地名だ。橋を渡らず、日向の山道へ入り込むとケヤキの下にサイの神(道祖神)がある。かって、ここが古戸の村境だったのだろう。
村人が大切に守ってきな聖様は、その従者ガラン様を含めてこの村の守護神であったのだろう。カラス天狗に模される修験者の影が偲ばれる。さきほどの「みさき様」とは、色々な祭り行列の先頭で登場する「猿田彦」=修験者のリーダーということだろうか。
道祖神のお姿からすれば、「延喜年間、京の聖が権現山に....」というのは、うなずけるような気がする。鴨山川が大千瀬川から天竜川に流れ落ちると同様、真実であろう。
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2011.9.10 by Kon
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