AutoCADLT2002 Tips−03




 
98 to 2002
 AoutoCADLTのモデル空間ペーパー空間について 98から2002の変更点を検証。縮尺や寸法、線種ピッチの設定はどう変わったのだろう?

 
ペーパー空間
 

 AutoCADLT98から「ペーパー空間」を使っていた。2002でも同様なのだが 表現がレイアウトとなっている。縮尺の違う図面を混在させる 時に便利だ。「ペーパー空間」がないCADでどうするんだろう?
 例えば「ポチの家」に標札をつけてやろう。小さな標札は原寸で打ち出して 文字を板にトレースしたい。こんな場合を想定すると分りやすい。どうするかと 言えば。全体を1/10で打ち出すのだから、10倍に拡大した標札のコピーを 図面に配置しておけばいい。 ただし、寸法線まで10倍にすると馬鹿デカイ数字が現れる。自動寸法機能 も使えない。寸法は分解しておく。これが2DCADの一般的な方法。
 ところうが、AutoCADLTは違う。「ペーパー空間」に「ビューポート」という 窓を開けて、そこからモデル空間を見る仕組みになっている。その窓には 縮尺を設定して実寸を拡大縮小投影をする。縮尺の違う全体と局部詳細は 別「ビューポート」にしてペーパーに配置する。だから、1)局部の拡大コピー を作らなくてもいい。2)寸法係数も別個に設定できるので自動寸法機能 のままでいい。この2点のメリットは大きい。
 AutoCADLT2002になって、この点がどうなったか一番関心があった。スタート アップガイドを一読すると、「ペーパー空間」に寸法を書ける。しかも、 リアル空間の修正変形に自動調整されるとあるではないか。 試してみた。


 これはリアル空間。リアル空間に寸法はない。




 これがレイアウト。印刷用に 非表示にしてあるが、浮動ビューポートを二つ設定してある。ビューポート内で寸法を書き込んだ。
 こうしておいて、リアル空間で図形を移動、ストレッチしてみた。 レイアウトで寸法は移動するし、変更もする。これはグーですよ。
 寸法スタイルは「レイアウト縮尺を使用」をチェックする。浮動ビューポートは、 表示>浮動ビューポート>1ビューポートで作成。当然レイアウト(ペーパー空間) で作成する。ツール>オブジェクトプロパティ管理の標準縮尺で変換率を設定する。 98の場合のズーム>倍率>1/10xpという設定も出来るよう配慮されている(クイックアンサーP 244参照)。これは操作が面倒。忘れてしまおう。


 
98とのデーター交換
 

 確かに、3D育ちのAutoCADLTだから当然かもしれない。寸法は紙に縮尺して書くから必要なまで。寸法はペーパー空間にあって当然なのだろう。98でもペーパー空間で寸法線は書けた。しかし、それは縮尺後の紙の上の寸法 でしかなかった。ここまでできていたのだから、縮尺率を掛けて実寸モデル 寸法として表示するまでだったとも言える。

 AutoCADLT2002では寸法線はペーパー空間で作成としよう。だが、AutoCADLT98 で作業する方とのデーター交換の場合どうなるのだろう。設定をうまくやれば データー交換に支障はないのだろうか。

 AutoCADLT2002では98形式で保存ができる。98で保存してどんなデーター になっているか調べればいいことか。ではやってみよう。


 AutoCADLT98形式で保存したデーターを98で開いた状態。「モデル空間」。


 AutoCADLT98形式で保存したデーターを98で開いた状態。「ペーパー空間」。

 まったく問題がない。こんな問題はある。ある時図面を完成して データーをメールしておいた。しばらくして電話が入り「図面配置がばらばらなんだけど」とのお叱りだった。事情を話し、ペーパー空間を開いて頂くようにお願い した。この時、AutoCADLTの「ペーパー空間」を知らない人が多いのを 知った。JW−CAD派でデーター交換用にAutoCADLTをインストール している人の大半はそうではないだろうか。

 

98での形式設定データー
 

 AutoCADLT98形式で保存した場合、形式設定はどのようになっているか調べておいた。AutoCADLT2002で採用された画層の線の太さ、印刷スタイル、印刷可否の 設定は当然切り落とされている。
 線種ピッチのグローバル線種ピッチはそのまま継承されている。文字スタイル には両者の仕様変更はないので問題はない。
 寸法スタイル。ジオメトリ>尺度で「ペーパー空間尺度の使用」、基本単位>寸法で「ペーパー空間のみ」。ここにチェックが入っている。その他設定値は継承されている。


 以上のように、AutoCADLT98形式で渡ったデーターは問題無く利用できる。 たた、AutoCADLTの「ペーパー空間」については説明する必要があるが。


 社内データー形式としては、印刷関連で2002の機能をフル活用が 戦略的に採用案とされる。だが、色と線の太さは社外では伝統的な関連付け が残ることは考慮しておく必要がある。当面、AutoCADLT98に未定義の 画層特性としての線の太さと印刷スタイル、印刷可否はデフォルト として積極的に利用しないことにしよう。ただ、AutoCADLT98仕様 として受け取ったデーターで印刷に不都合な画層や色が使われている 場合、2002上で短時間にプリントアウトできるテクニックの習得 が可能である事は覚えておこう。


 

モデル空間から寸法線が消えて。
 

 AutoCADLT2002で寸法線はペーパー空間に集約され、モデル空間から 寸法線が消えた。これは本来のコンピユーターCADの風景。 3Dモデルに寸法線はない。各種計測ツールがありモニタリングしている。
 建築、土木でいう2DCADは平面、立面、側面で考える習慣の エンジニアのための物。顧客にたいするプレゼンテーションには パースという3Dは不可欠だ。
 だが、建築、土木で平面、立面、側面で考える習慣が無くなるか と言えば、なくならないだろう。施工の時も必要だ。「ペーパー空間」 を活用してゆくなかで、「モデル空間」と「ペーパー空間」のどちらに 寸法を書き込むかといえば、「ペーパー空間」。紙に展開した 平面、立面、側面に付随した属性として「寸法線」はある。
 ドラフティングツールとしてCADを利用している純粋2D キャドではこの疑問は起こらないのだが、コンピユーター3DCAD から眺めてみると、2Dキャドは「ペーパー空間」の世界といえる。  本家AutoCADのサブセット版としてのLTプロモーションにおいて AutoDesk社自身、この辺の捉え方はあいまいだったような気がする。 LTのプロモーションにおいては、「ペーパー空間」を表に出すべき だったように思う。AutoCADLT2002でその事がはっきりプレゼンス できるのだが。
 それは、こういう事だ。「モデル空間」には3Dモデルしかない。 「ペーパー空間」には平面展開図と寸法しかない。両者は連動している。


 AutoCADLT2002の「モデル空間」。この空間には左下の3Dモデルしかない。 ビュウポートを4つ作り、4方向からモニタリングしている。




 AutoCADLT2002の「ペーパー空間」。寸法線は平面、立面、側面のビュウポート に作成してある。左下にはパースが張り付けてある。

 僕は本家AutoCADを使ったことがないので分らないのだが、 ここまでくれば、少なくとも表現ルーチンとしてはAutoCADもAutoCADLT も差別化する必要もない気がする。あるのは3D空間でのダイレクト な計測や編集機能の差なのでしょう。本家AutoCADは3Dレンダリングができる。 パースに色と光と影を付けたい。そうお考えなら64万円の本家だろう。 それが要らないのならLTの17万円をどうお考えですか?と言う事になる。


2003.10.5
by Kon