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カメラは「デジカメ」として近年大きく変貌を遂げた。デジタル化で、どんなことが 出来るのだろう。その最初の答を,画像解析が提供してくれる。 航空写真測量の技術を利用し、市販のデジカメで3次元画像処理、3次元測量 ができる。測量器械メーカーTOPCONのPI-3000を利用して、吊り橋の3次元計測 を行なった。 |
地上の地物を空から撮影する。写し出された地物の座標を確定する。
これが航空写真測量技術。例えば、塔のてっぺんはレンズを通してフイルム
に点として像を結ぶ。フイルムの点と地上の塔の先端はレンズを中心として比例関係にある。焦点距離が分かれば塔までの距離が逆算できる。相似の原理
を利用する測量技術の一分野だ。 フイルムの点とレンズの中心を結ぶ線の延長上に、その塔の先端がある。それは分かる のだが、延長線上のどこかでしかない。それならば、少し離れた位置で、もう一枚の写真を撮る。二つの延長線の交点として、塔の先端は平面位置を確定できる。 これが航空写真測量の大まかな原理。 |
河むこうの点までの距離を測る。こちらの岸に基線を引き、その両端の距離を正確
に測る。同時に両端で点の角度を測っておく。三角形の定理により、距離
を計算で求める。これが三角測量の原理。 この原理の本質は比例計算。三角形の場合は「相似形」のルールを利用する。1:2の関係があるのなら、1の物が100なら、2のものは200だろう。この知恵を利用する。利用するには、1:2なのか、1:3なのかが重要になる。物差しの精度が測った結果の精度を決める。基本となるものを 決めることを「キャリブレーション」という。 みんなが持つようになったデジカメだが、どれでも写真測量に使えるという訳ではない。 TOPCONのPI-3000が実績として「キャリブレーション」を積み重ね、推奨するのは OLYMPUS E-20、MINOLTA DiMAGE7だ。(2003年の時点) このような撮影をして、デジカメのレンズひずみの解析をする。キャリブレーションのイメージ。 |
銀盤写真は現像して解析装置にセットし、熟練したオペレーターにより
数値化される。職人技の領域といえる。アナログ装置を人が操作する技術だった。
これをデジタル技術に変換する決め手は、デジタルカメラの構造だ。
有償なのだが、デジカメを預けるとキャリブレーション作業をしてくれる。
以後、その値をセットして解析に利用する。 デジカメの1画素単位で3次元座標を計測できるシステムがPI−3000。 デジカメのCCDには、高密にセンサーが埋め込まれている。このCCDに はハニカム構造の物がある。一般的なデジタルカメラの画素配列は正方形の格子だが、これを八角形のハニカム構造にすることで、受光部面積効率を向上させている。同じ画素数で記録精度を上げる工夫がされている。Fujifilmの「FinePixシリーズ」などがそうだが、画像解析には原理にふさわしくない。残念だが、同じデジカメと いえどもPI-3000では利用できない。 |
「3D画像計測ステーション PI−3000」 基本ソフト 動作環境 OS Windows95/98/Me/2000/XP CPU Pentium 500MHz以上 RAM 128MB以上 FDD 1ヶ以上 カメラ条件 画素数 200万画素以上 一眼レフタイプ CCD構造が特殊でないもの。 主な解析作業 (1)相互標定 左右の画像の対応点(パスポイント)を指示することにより、左右の画像を撮影したカメラの相対関係を求める。これにより、左カメラの光軸を中心とした3次元の座標系で立体モデルが定義される。 (2)絶対標定 座標の既知である点に地上での3次元座標値を与えることにより測地座標に変換する 。 (3)画像の偏位修正 カメラで撮影した写真は中心投影であるが、地図のような正斜投影に画像を変換する。これをオルソフォトという。地図のように写真全 体の縮尺が均一であるような画像にする。 (4)三次元計測・図化(点/線) 偏位修正処理されたステレオ画像のメッシュポイント毎に3次元計測を行なう。 画像を撮影した時のカメラの相対的な傾きを求めるパスポイントはラップ部分に 7点以上必要。そのうち4点以上に現地で測量した 座標値を入力すれば、 現地の座標系での計測が行える。つまり、測量できる。 作業(4)により広い範囲のDSM(Digital Surface Model)を自動的に生成できる。 また、今回のような構造物の主要点の座標を読み取りCADデータとして 出力できる。 データ出力 DSM(TIN) DXF(POINT) ,DXF(3DFACE) 図化データ(線計測) DXF(POLYLINE) , CSV(POLYLINEの頂点) 図化データ(点計測) DXF(POINT) , CSV 等高線 DXF(POLYLINE) , CSV(POLYLINEの頂点) オルソ画像・鳥瞰画像 BMP , JPG |
一日飛行機を飛ばせば200万円程の費用がいる。装置産業であった航空測量の
一部は、1/10程の費用でデジタル写真計測に置き換わるだろう。例えば、
地すべり地帯の対岸から一眼レフのデジカメで定点観測しておけば、災害予知
に有効であり、万一にはリアルタイムに計測成果を得ることができる。都市内では
ビルの屋上からの写真、遺跡調査では園芸用脚立の上からの写真が活躍している。
GIS分野(地形測量)で、活躍の舞台が用意されているといえよう。 遺跡調査例(TOPCONのパンフレットより転載) このようなデータ側の革新に対応して、これを利用する技術が普及する必要がある。 当然CADの操作技術なのだが、データが3次元なら、処理するCADも3次元 でなくてはならない。低価格3次元CADで最も普及しているAutoCADLTがその 処理アプリケーションであるこのに間違いはない。 今回、吊り橋の3D計測は当社が企画に参加したが、実測は他社で行なわれた。 こんなデータが届いた。 |
この成果により、次のような解析を目的としたいた。 (1)既設構造物の調査は、テープとコンベックスで行なうのが一次調査である。 調査の経験を積むと、全体の基線をしっかり設けて、注意深く計測を しないと目的の結論を判定するようなクリアなデータは収集できない。 したがって、部分的な実測と同時に、遠く離れた視点で構造物全体を計測する必要がある。 (2)吊り橋という特殊構造物では、ワイヤーの曲線形状を計測するには、 中間点を精度よく3次元計測する必要がある。このため、ノンプリズム光波測距機 による計測を行ない、鉛直方向の曲線と同時に、水平面内の曲線形状を押さえる必要がある。 あいにく、ケーブルの黒色錆と曲面形状によりノンプリズム光波では十分な 反射光が得られず、プリズムを計測点にあてがい測定した。塔頂部付近は スタッフの先端に付けたミラーによる計測であり、十分な精度の測定値とは いえなかったのが残念であった。これは、CADで曲線挿入した計算値と比較 して誤差処理をすることにした。 設計図を持って実際の構造物を測りに行くと、テープで測った長さとは一致しない。 施工段階で許される誤差の範囲で完成しているからだ。それはそうなのだが、 実際現場で作業するとわかるが、コンクリートの壁の切り口は直角ではない。 面取りがしてある。さて、図面の寸法を測るには、どこに光波をショットすべきなのか。 この問題に遭遇して現場で解決できるのが測量技術者の腕である。時間をかけてテープ で丹念に測っても、本当に求めたい計測値が得られない。写真解析でモデルを作り、 CAD上で計測する。これが正解。これが当社の提案するところうである。 参考にデジカメ測量の精度をTOPCONのパンフレットより転載させていただく。 |
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